2010年6月16日水曜日

【映画】アウトレイジ

★★★☆☆

北野武監督最新作。

基本的に北野映画はかなり好きです。特に初期のものは。ただ近作3作品(「TAKESHIS'」「監督・ばんざい!」「アキレスと亀」)はあまりの評判の悪さに怖くて観てません…。

で、今作はというと久々に原点回帰というか何年かぶりのヤクザ映画なのでちょっと期待値が上がりすぎてしまってましたね。前評判も高かったし。つまらなくはないけど絶賛するほどでもないような。結局「何だこの野郎!」「バカヤロー!」の世界を許容できるかできないかになっているのかなと。明らかに意図的に同じ台詞を執拗に言わせてて、そこにノれないと全部ダメみたいな。個人的にはギリギリありだと思いました。

また北野映画にはかなり珍しいと思いますが電話でのやりとりとか説明過多な台詞が多過ぎでそこが気になりました。今回エンタメ路線ということで意識的にそれをやっているのであればそれはちょっと違うような…。「HANA-BI」のラストシーンの岸本加世子が放つ一言に集約された美しさのイメージがあるので最近の邦画のダメなところが、まさか北野映画にも見られるとは…(あとアップシーンの多用も)。

これだけ女排除の男しか出てこない世界なのに裏切りとか他者を貶めることが目立ち過ぎててあまりホモソーシャル的な感じがなくて残念(椎名桔平ぐらいですかね)。任侠映画といえばやっぱりそこは重要な要素だと思うので。

いくつかの殺害シーンの描写が結構斬新だったのでそこは楽しめました。特にラスト近くの車を使った“あの”シーンは一見の価値ありだと思う。

他にも音楽の使い方とか不満な点はいろいろありますが、もちろん現状の邦画に比べると圧倒的に力強く面白いのは間違いないです。ラスト近くのたけし演じる大友の決断なんかこれまでの北野映画にはなかった展開だと思います。次作は高倉健主演でヤクザ映画を撮るという噂もありますが、かなり期待して良いんじゃないんでしょうか。

2010年6月13日日曜日

【映画】アイアンマン2

★★★★☆

何もかも全てを持っていて、でも子供っぽいところもある主人公トニー・スタークをロバート・ダウニーJrが前作同様好演しているアメコミヒーロー映画です。
アメコミ全然詳しくないですが前作をDVDで観ててアイアンマンを作りあげていく工作場面とかアメコミ映画らしくないユーモアなんかがちりばめられててかなり好きだったので結構楽しみにして行きました。あと音楽の使い方も好きです。

結果としてかなり良かったです!相変わらず役者陣は魅力的に描かれています。
特に黒髪のスカーレット・ヨハンソンがヤバい!この映画でファンになりましたよ。スピンオフで映画作られるかもしれないそうですが期待してます。
悪役ミッキー・ロークは「レスラー」のランディ・ラムにしか見えません(笑)。あの何を考えているかわからない“微笑”が非常に不気味さを纏ってて良かったです。ラストはかなりあっさり風味ですけど…。

ただ残念ながら序盤のモナコのシーンが面白すぎてここが一番の山場になってしまいましたね。なので後半部分がやや単調になってしまいました。クライマックスが夜のシーンでしたが個人的に動き回るシーンは暗いとわかりずらくあまり好きではないのでそこは不満。


こういう映画は大画面大音響で観るのが一番です。日本ではアメコミ原作というだけで敬遠されがちですがエンターテインメント映画として万人におすすめできると思います!

2010年6月7日月曜日

【映画】告白

★★★★☆

湊かなえ原作の本屋大賞受賞作の映画化。
「下妻物語」「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督最新作。

「読んでから観るか、観てから読むか(by角川映画)」で今回は読んでから観ました。
原作の感想は瞬間的に興味を持たせるのは上手いけど全体としては「微妙…」な感じでした。グイグイ読ませるけどあとにはあんまり残らないというか。あっさり風味です。ただこの登場人物の「主観」しかなくて一見映画化するには難しそうな作品を中島監督がどう映画化するのかかなり楽しみでした。


結論から言うとこれははっきり快作・怪作といって良いと思います。
今年の邦画でも上位に来るんじゃないですか。とくに松さんは主演女優賞ものです。また木村佳乃の息子を殺害しようとする直前の台所で思い出したように日記を書くシーンはちょっと最近ないくらいゾッとしました。あの状況で「天国」はないでしょう…。

もちろんR15指定でえげつない描写もでてくるので万人にオススメできるわけではありません。ミュージカルっぽいシーンとか中学生の描き方、HIVのあまりにも幼稚すぎる捉え方とかのデフォルメし過ぎなところとかは不快に感じる人もいると思います。ものすごいお金がかかっている実験的な映画といえるかもしれないです。

前述しましたが主観しかないということは真実が見えにくいとも言えます。そこにCG、スローモーションの多用、そしてこれでもかと音楽を重ねてくる中島監督の作風が完全にはまったと言えるんじゃないでしょうか。ただ色々考える余地がありすぎて頭の中がグラグラです(笑)。全然まとまりません。でもこのわからなさが心地良いかも。


完全に余談ですが、エピソードの繋ぎ方が「愛のむきだし」に似てる気がしました。音楽の乗せ方とか。正直音の使い方は全体的にあんまり好きではないけどcurly giraffeを使っているのには驚きました。

個人的に中島監督はあんまり好きな監督ではありませんでしたがこれだけのクオリティのものを見せられるとそんなこと言ってられないです。恐れ入りました…。
間違いなく原作より面白いです。これはかなり特殊なケースだと思います(笑)。